先回り予想をさせない舞台設定
映画「ジョジョラビット」を見てきました。事前情報によると第二次大戦末期のドイツが舞台、ナチスへの忠誠心に溢れる10歳の少年が主人公で想像上の話し相手でヒトラーが出てくる話。どんな内容なのか?どこに連れて行かれるか全く予想できない感じで楽しみを持って見ることができました。(ネタバレなし)
「ユダヤ人差別」「第二次大戦」というこれまでもよく描かれた、今でも神経質なジャンルを取り扱いつつ、少年の空想にヒトラーを登場させるという冒険(悪ふざけとも取られかねない)をして、ハードルを上げていく監督の発想に感心します。
教科書的な伏線の貼り方
隠れているユダヤ人少女と少年(ジョジョ)を軸にちょっとしたシーンを積み上げていきながら、物語(世界)を掘り下げていって観客をじわじわと引き込むという洋画にありがちな構造をしているのですが、その分ストーリーをなぞる形でシーンを作っていく構造と違い、作り手のセンスが問われる構成です。何か特別なものを描いている訳ではないのですが、ちょっとしたカットやシーンが印象に残るメリハリの付け方など本当に巧いんですよね。
今更ですが映画は(テキストベースの)小説とは違って、セリフでなくて音響や映像で説明する事ができる訳で、その特長を使っての演出効果を魅せる計算も出来ていて、そういう教科書的な映画でもありました。
期待に応える幕切れ
戦争を描く映画として、これまでの第二次大戦映画が描いてたどの内容にも与する事もウェイトを置くこともなく独自の世界を描いています。戦争をモチーフにした映画のメッセージ性との距離感も重くも軽くもなく、映像表現としても秀逸です。
第二次大戦と言う史実、死と隣合わせの非日常を描く限り、こういう映画の結末に対して一観客としては(できる事は限られるんじゃないか)意地悪く見ているところもあったのですが、そういう予想に見事に裏切ってくれました。全編を通して監督の数々の才能が心に残りました。