あぐらのSoloZakki

令和が始まる直前に53歳で退職しました。安定から自由を目指します。

映画版「21世紀の資本」が見せる未来と隠れたバイアス

「21世紀の資本」映画版

本当は3月に公開予定だったものが、コロナ禍で5月に公開になったのまでは知ってました。もともと映画館に行こうかなと思っていたんですが、さすがにこういう映画がイオンシネマで公開されるわけもなく限られた映画館でしか公開されない事を知り、動画配信サイトで公開されるのを待つ事にしてました。

ところがどういうわけか動画配信サイトで公開されることにとなる事になったみたいです。 (有料ですけれど)

natalie.mu

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21shihonn.com

説明は明確

さすがに?書籍版は読んだ事はないですが、主張は非常に明快で資本収益率は経済成長率よりも常に上回っているから資本収益率を得る立場にならなければならない、ではなく資本主義社会では格差はどんどん広がるという話。r>gという式も有名ですね。そしてピケティ自身は格差是正のために累進資本課税を提唱しています。

wirelesswire.jp

上質な歴史ドキュメント作品 

ただ映画の中では「r>g」という言葉は明示されず、最後の方でちょっと触れる程度でした。映画はビジュアルと音の表現媒体ですから地味な「式」を出すのはそぐわないかもしれません。

構成は、前半はどちらかと言うと歴史ドキュメンタリー的な内容でそういったジャンルのドキュメンタリーが好きな人は面白いかなと思います。自分は面白かったです。(つまり最初の方は話が古すぎるきらいがある)後半について未来について言及されていきます。

モノポリーで疑似富裕層の心理テスト

特に印象に残ったのは心理学者によるモノポリーを使った疑似富裕層の振る舞いテストです。これはコイントスによって片方のプレイヤーをわざと有利(サイコロを2個振れる、持ち金を多くしてゲーム開始)な条件にして、モノポリーをプレイした場合に金持ち役はどんな振る舞いをするのか?という内容なんですが、調べたらありました。

gigazine.net

ランダムに抽出された2人のプレイヤーにモノポリーをプレイさせ、一方のプレイヤーにスタート時から多くのお金を持たせる、という実験も行われています。ゲームの結果は、最初に多くのお金をゲットしたプレイヤーが裕福になり、そうではなかった方のプレイヤーは貧乏になるのですが、何組もの被験者に同じ条件でモノポリーをプレイさせたところ、裕福なプレイヤーは次第に横柄な態度を取るようになり、テーブルに置いてあるプレッツェルをたくさん食べることが分かりました。

 

格差と低社会移動の未来

格差社会なんて今さら言われなくてもよく知っていると言うかもしれませんが、そういう「ワンフレーズ」な印象でなく、より掘り下げて今の資本主義のディテールや未来を様々な識者が語ってくれています。

 富裕層は相続と投資によってさらに富を増やしている事、そして一部の富裕層が世界の政治に影響力を持っている事、そう考えると今の経済的な動きはより分かりやすいです。

経済の成長の恩恵は労働階級にはほとんど回らないこと、例えばコロナ禍であっても株価は下がらない事はひとつの証左でしょう。(=経済危機であっても富裕層が損しないような政策がとられているから)

そう考えると(富裕層に不利益な)ピケティの提唱している事が実現される可能性は限りなく低いでしょうし、もっと極端な見方をすれば世界規模の戦争を資本主義国が起こす可能性も限りなく低いともいえます(=格差の縮小は戦争でしか実現されていない事を歴史が証明しており、戦争は避けられねばならないから)

こういった資本主義の方向性のロジックはシンプルなので、理解しやすい内容でした。

 ひとつだけ疑問なのは、富が一部に集中して格差が広がる世の中は、中世の絶対王政時代なら貴族階級を倒すために革命するしかないでしょうが、議会制民主主義の現代で(世帯収入での)多数派がそれを是正するのは革命より簡単な気がします。無関心や諦観も計算のうちだとするとそれはそれで怖い事ですが。

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