あぐらのSoloZakki

令和が始まる直前に53歳で退職しました。安定から自由を目指します。

「すずめの戸締まり」と童話的リアリズム

既に公開から1ヶ月くらい経ってますが「すずめの戸締まり」を観てきました(イオンの株主優待利用)。例えて言うと、味にはちょっと違和感を感じたけれども後味はいい飲み物、そんな感じです(「ネタばれ」はないです)

東日本大震災を描いた事で話題になっていたと言うニュースも見たんですが、受け止め方は色々とあるにしろ、個人的にはそこまでセンセーショナルな表現になっていたとは思いませんでした。「ライン」を超えない表現になっていたと思います。

そもそも「地震」を扱ったのは、主人公たちの行動に目的を持たせるために、今の日本で一番「災厄」としてのイメージのリアリティを感じさせるものだったからではないかとも考えます。

 

リアリティという話で言うと「魔術的リアリズム」という文学ジャンルがありますが、こういう作品、言うなれば「童話的リアリズム」とでも言うんでしょうか

マジックリアリズム(英: magic realism)、マギッシャーレアリスムス(独: magischer Realismus)、魔術的リアリズム(まじゅつてきリアリズム)は、日常にあるものが日常にないものと融合した作品に対して使われる芸術表現技法で、主に小説や美術に見られる。

 

リアルな日本の風景を描きつつ、話の内容はやや「童話的」です。「童話的」と言うのは悪い意味で言っているんじゃなくて、例えば「眠り姫」で王子様がお姫様にキスすると目が覚める理由は理詰めでは説明できないし、科学的な説得力は必要としないです。その方が物語として収まりがいいし、エモいからです。そういう意味でうまく纏まった作品だと思いました。

 

トータルとして見終わった感じは悪くないんですが、そこに到達するまでのロードムービー的なサブエピソードがご都合主義と言うかテンプレ的と言うか、おっさんにはキツかったです。

まあ童話的なクライマックスは(そういうものなんだと)許せるんだけれど、現代日本の日常が絡むエピソードは(そうはならんだろうと)現実的なツッコミを入れたくなったって事でしょう。

 

アニメ作家としての映像表現力も構図にも才能が感じられて、話のアイデアも面白いし、話の纏め方も悪くないのだから、細かい脚色は誰か他の人に任せたらとも思ったんですが、そうはいかないんでしょうね。