あぐらのSoloZakki

令和が始まる直前に53歳で退職しました。安定から自由を目指します。

映画「ファースト・マン」感想

歴史に残る名言を残した男の勇気と感動の… 

ファースト・マン。人類初の月面着陸の映像化であり、歴史上の人物になった有名なアームストロング船長の話であり、壮大なドキュメンタリー風の映画と思っていましたが…。

アメリカ万歳とはかけ離れた不穏な空気の映画

  アームストロング船長(船長は最後の最後だけれどもこれでいきます)は病気の娘を失ったせいか、常に微妙な翳を感じさせ、やや内向的な印象を受けます。宇宙飛行士として選抜されたメンバーはフィジカルはもちろんメンタルも強く、優れた知性を持つライトスタッフな人だと思っていましたからちょっとした違和感を感じます。

何が違和感なのかなと思っていたら、この映画アメリカンジョークがほとんど皆無なんですね。コメディ映画じゃなくても、ちょっとした隙間にジョークを入れてくるアメリカ映画の感じが分かってもらえればと思いますが、そういうのが一切無いのです。

 それだけでなく、序盤から心理サスペンス映画か何かのような不穏な空気がひしひしと伝わってきます。当時の宇宙船内部の狭さ、アナログな計器がそういう雰囲気作りに一役買っている感じがし、細かいセリフのやりとりの積み重ねによってある種の緊張感が画面に絶えず漂っているのです。見ていて不思議な感じがしました。

 当時の宇宙開発が、結果的には成果をあげたものの言うほど順調な道のりではなかったいいことばかりじゃなかったので、明るい面ばかりを強調せず、手放しに褒めないような映画作りにしたのかなと思ってみていたのですが…。

人類初の快挙と国家的大プロジェクトをできるだけ個人の内面に閉じ込めてしまう

基本的にちょっと不親切なんですよね。NASAの宇宙開発の歴史や、その時点の状況、アポロ11号の計画とか、解説役の人とか一切おらず、そういう俯瞰的なシーンも少なく、宇宙飛行士視点なので、映画を見ているだけで宇宙にいるような感じを味わうとは程遠いです。

それとアームストロング船長が基本的に嬉しそうじゃないんですよね。人類初めて月に降り立ったのに、死んだ娘の事を思い出すとか、うーん…。創作にしてもそれはちょっと。感情移入しづらいなあと思いました。

 もちろん作品の出来としては悪くなく、こういうのもありかもと思わせるすごく才能を感じさせる画作りをしてて悪くないんですが、あえて題材でやる事なのかという素朴な疑問が残るそんな作品でした。

 

ファースト・マン (字幕版)

ファースト・マン (字幕版)

 

 

 

 

 

全部見ると納得できます。引き込まれる何かがあります。不思議な台詞の積み重ねとか、

 

正直途中で、サイコ・スリラーに変わっても驚かない、何かがいる雰囲気があります。その不穏さにはそれなりに理由があるのですが、

そういう際どい視点で映画を作りつつ宇宙開発に関わった多くの人々を不安と伝わってくる仕上げきった才能に感心します。