あぐらのSoloZakki

令和が始まる直前に53歳で退職しました。安定から自由を目指します。

「君たちはどう生きるか」は「歌詞がよく聞き取れない歌」を聞いたような印象

宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」を最近見てきました。ネタバレをくらわないように注意する生活から解放されてスッキリしました(ネタバレありです)

 

5年ぶりとなるこの新作、「ちょっと意味深なタイトル」と「鷺一匹だけのポスター」以外の情報や宣伝も一切無いのが話題でした。まあ宮崎監督が作ったという情報がそもそも宣伝であり、大きな事前情報だとは思いますが、これまでにない新鮮な気持ちで観る事ができました。こういうのも良いですね。

 

タイトルの「君たちはどう生きるか」ですが、お母さんが主人公に遺した本として出てきます。それを以て「タイトル回収」と言っていいものかどうか?タイトルになった理由が正直よく分からなかったですね。

「お母さんの勧めた本」が別のタイトルだったら、それが今回の映画にタイトルになったって事になるんですが、それだけ?って感じもします。

元になった「あの本」を読んでないと映画の内容が分からないと言うのも、ちょっとどうかなと言う気もします。

 

今回の作品を見る前の心持ちとしては、宮崎さんが引退を撤回してまで表現したかった何かがあるんじゃないかと言う(勝手な)想像が働いていました。その想像は「君たちはどう生きるか」というタイトルからも強化されていたんですが、実際の内容は少年主人公が「異世界」から「新しいお母さん」を連れ帰るストーリー。さらに丸めてしまえば「ちょっとだけ大人になった少年」。

肝となる「異世界」表現にはふんだんに宮崎色が出ていましたが、映画タイトルとの相関や、思っていたような「あえて作った」感を感じませんでした。

 

全体としての感想は、例えて言うならば「歌詞がよく聞き取れない歌」を聞いたような印象です。その意味の一つには、メロディも演奏技術も良かったけど歌詞だけが耳に残らない(記憶に残らない)感じです。

 自分の記憶の宮崎作品では、映画のストーリーとは別に些細なシーンでのちょっとした台詞が記憶に残る印象がありますが、記憶に残る映画って些細な会話のやりとりですらちょっと違ったところがあるものです。

説明不可能(あえてしない?)な異世界表現と単純な脱出プロットだったせいか、映画そのものがセリフの重みが少ない構造だったと言うのもあります。

 

まあ自分には刺さる台詞が少なかったという意味は、宮崎監督が自分のようなおっさんの方を向いてはいないと言う解釈も当然あります(苦笑)

 

一般的に台詞がピンと来ないまま時間が長い映画を見ていると、そのシーンが無くても映画が成立するんじゃないかとも思ってしまい、結果的に映画を冗長に感じてしまいます。

そこでまたタイトルの話に戻って「君たちはどう生きるか」的なメッセージがあるならもう少し台詞に反映するとか監督の人生観とかが反映されるような作りになって欲しかったと思います。

もちろん具体的な台詞で生き方を明示するようなストレートな内容になるとはさすがに思っていませんが、そこは宮崎監督ならではの想像を越えるようなやり方を期待したわけですが…。案外シンプルな話だったなという気がしました。