あぐらのSoloZakki

令和が始まる直前に53歳で退職しました。安定から自由を目指します。

「お金の減らし方」を読んでみた

先月のブログで触れていたように、今後の出口戦略の参考になるかと思い、ミステリー作家の森博嗣さんの「お金の減らし方」を読みました。ちなみに森さんの小説を一冊も読んだ事がないので、森博嗣像を一切持つ事なく読んでます。

 

この本は、先月レビューした大江さんの本「90歳までに使い切る…」を調べると、よく出てくる本です。

agura-huma.hatenablog.com

 

「お金の減らし方」という表題でしたが、具体的な内容としての印象は(「減らし方」と言うより)「使い方」と言う感じでした。(どっちも同じかもしれませんが)

 

そしてその使い方とは、分かりやすく抜粋すると「必要なものはできるだけ我慢して、欲しいものにお金を使う」と言うものです。

「生活費」は後回しにして「欲しいもの」にお金を使う事を優先すべきだと言うのはユニーク過ぎる考え方です。

僕が稼いだ給料は二人のものであり、それぞれが一割を遊びに使う。残りの八割を共通費として家庭を維持していこう、というものだった。

奥さんはさそがし大変だった事かと思います(そう書いてありますけれどね)

 

面白いと言えば、運用についてもこんな風に言及してます。

この金を運用する行為には、まったく興味がない。増えたところで微々たるものだと考えている。仕事で稼ぐことに比べて、期待値が低すぎる。

最近有名な「r>g」を真っ向から否定する考えで、最近は運用の恩恵を日々実感している自分は当然賛同しかねますが(苦笑)、バイトで書いた小説(仕事)が二十億円の印税をもたらした体験があればこその意見です。

 

そんな特別な人の意見が何かの役に立つのかと言う気持が浮かびますが、その点についてもちゃんとこう言ってます。

僕のやり方に対して、賛同を求めているのでは全然ない。違う価値観にときどきは触れて、新しい考え方を取り入れることで、それぞれが得をすることが往々にしてある。

このあたりの言い回しがさすがに文章のプロだなと感じました。

 

ぶっちゃけてしまえば、森さんは(本の印税で)この先もお金は減らないだろうとしか思えなかったのですが、この本を通じて伝わってくる「自分の好きなように生きればいい」「他人の事なんてどうでもいい」と言うスタンスには共感し、タイトル詐欺な点にはさほど気になりませんでした。

理系出身で文芸にも拘りがあると言う属性が、自分と似ているのにもシンパシーを感じたのかもしれません。

 

また単に個人主義を推すだけでなく、自分のためにお金を使う事で発生する矛盾みたいなものに気づく視野の広さにも共感します。

自己満足は、人生の目標としても良いほど立派なことだ、と僕は考えている。ただ、社会で生きていくためには、まったく他者を切り離してしまうことは難しい。

社会のツールであるお金を、「I」という自分の自己満足に使うことは、本来の意味では矛盾を孕んでいるだろう。自分だけの世界、自分だけの孤独の価値に、社会的な力が何故必要なのか、という疑問が生じるからだ。

「お金が使える」と言う事は「社会」が健全に機能している事が前提にあるわけで、「個人」を優先しつつ「社会」をアテにしているのは矛盾みたいなものがあると言うわけです。

「分業で成立している現代社会(人々が色々な社会的役割を担っている)」で暮らしながら「早期リタイアする(何の役割を担わない)」事の矛盾に通じるものがあると感じました。

 

今回の本で、森さんの本業の作品の方にも興味が湧いたのですが、まだまだアウトドアな好奇心の方を満足させたいので、先の愉しみにとっておきたいと思います。

お金の減らし方 (SB新書)

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